top of page
検索
執筆者の写真大坂

困ってるひと

24歳の大学院生だった著者を突然襲った病気は、体の免疫システムが暴走し全身に炎症を起こす「筋膜炎脂肪織炎症候群」という非常に稀な難病。それも艱難辛苦の末、回り逢えた医師によってようやく明らかになったのです。 しかし本書の主題は単なる闘病記ではない。

障害者手帳を交付されても社会からの保護は期待できず、福祉からも見捨てられ自立を迫られる、「医療難民」となった著者が、自身をとりまく「困った」環境に正面から向き合い、生存を賭けて戦う日々の姿が冷静に綴られるノンフィクションです。(日本の社会保障制度は複雑怪奇で、難病患者の前にそれは「モンスター」のように立ち塞がっているのだ)

事態は相当に深刻でありながら、著者の話しぶりは常にどこかユーモラスで客観的な視点を忘れていない。忍耐強い理性をもって「生きるとは何か」という根源的なテーマに挫けず取り組む真摯な姿は感動的で頭が下がります。

フラフラの容態でも何があっても絶望だけはしない。 本日も「絶賛生存中!」なり。

超お勧めの一冊。

閲覧数:6回0件のコメント

最新記事

すべて表示

モスクワの誤解

シモーヌ・ド・ボーヴォワールが1966年から67年に執筆し、大きな話題をよんだ小説です。 恥ずかしながら初ボーヴォワールですが、久しぶりに素敵な文章に出合いました。 「老いること」に伴う身体の衰えや好奇心の減退、自分自身への失望、諦めといった諸々漠然とした喪失感が見事な筆致...

ロボット・イン・ザ・ガーデン

何て愛おしい物語でしょう! 疎遠だったブックレビューを思わず書いてしまう程に! 近未来のイギリスを舞台に、妻からの苛立ちも意に介さず、仕事もせず親から譲り受けた家で漫然と過ごす「ベン」が、ある日、自宅の庭に突然現われた旧式箱型ロボット「タング」と出会うところから物語は始まり...

おもちゃの昭和史 おもちゃの王様が語る

メガヒット商品を世に生み出し続けたタカラの創業者、佐藤安太氏が著した本書は、過去の経営を分析したり、単なる想い出話を綴るのではなく、昭和のおもちゃ史を後世に残そうという使命感を感じさせる。 ダッコちゃん、リカちゃん、人生ゲーム、ミクロマン、チョロQ、トランスフォーマー、フラ...

コメント


コメント機能がオフになっています。
bottom of page