top of page
検索
執筆者の写真大坂

モスクワの誤解

シモーヌ・ド・ボーヴォワールが1966年から67年に執筆し、大きな話題をよんだ小説です。

恥ずかしながら初ボーヴォワールですが、久しぶりに素敵な文章に出合いました。

「老いること」に伴う身体の衰えや好奇心の減退、自分自身への失望、諦めといった諸々漠然とした喪失感が見事な筆致で描かれ、「ぼくの人生は何の役にも立たずじまいになるだろう」という登場人物のつぶやきは、そのまま私自身の恐れとして胸につきささる。

日増しに老いながら、今をどう生きればいいのか分からなくなる自分自身と向き合うことは難しい。しかし作品中に僅かな光明とも言えるヒントも得た。 モスクワの美しい夜空を見上げ、「見た」ことの感動を昔覚えた詩によって表現し得た登場人物は、昔の言葉が若々しく再生される恒久性に胸を熱くするのである。 詩であれ、音楽や絵画であれ、優れた創作は色あせず永遠にその美しさを保ち続けるという事実に、生きている限り創造的でなければならないと思い知らされる。

婚姻や出産に縛られず、互いの自由意思を尊重しながらサルトルを終生の伴侶とした生き方にも共感を覚えます。また彼女の作品を読んでみよう。

閲覧数:8回0件のコメント

最新記事

すべて表示

ロボット・イン・ザ・ガーデン

何て愛おしい物語でしょう! 疎遠だったブックレビューを思わず書いてしまう程に! 近未来のイギリスを舞台に、妻からの苛立ちも意に介さず、仕事もせず親から譲り受けた家で漫然と過ごす「ベン」が、ある日、自宅の庭に突然現われた旧式箱型ロボット「タング」と出会うところから物語は始まり...

困ってるひと

24歳の大学院生だった著者を突然襲った病気は、体の免疫システムが暴走し全身に炎症を起こす「筋膜炎脂肪織炎症候群」という非常に稀な難病。それも艱難辛苦の末、回り逢えた医師によってようやく明らかになったのです。 しかし本書の主題は単なる闘病記ではない。...

おもちゃの昭和史 おもちゃの王様が語る

メガヒット商品を世に生み出し続けたタカラの創業者、佐藤安太氏が著した本書は、過去の経営を分析したり、単なる想い出話を綴るのではなく、昭和のおもちゃ史を後世に残そうという使命感を感じさせる。 ダッコちゃん、リカちゃん、人生ゲーム、ミクロマン、チョロQ、トランスフォーマー、フラ...

コメント


コメント機能がオフになっています。
bottom of page