「パンデミック(世界的大流行)」という言葉をご存知だろうか?
2003年初頭、世界中の目がアメリカのイラク侵攻に集っていたその同時期に、実は人類の存続を脅かせる恐怖があった。新型肺炎(SARS)の大流行である。
当時のメディアが、私たちに伝えていたSARS報道はお気楽なものだった。実際は、非常に死亡率の高いウイルス性疾患によって、世界的規模の悲劇がもたらされていたかもしれない、危機的状況にあったのだ。
本書では、中国本土から香港、アジア周辺国、カナダへと、驚くべき速さで広がった伝染病に対して、医療関係者やウィルス研究者、WHOが如何に戦い、凌ぎ合いながら流行を阻止したかが時系列に記されている。
読んでいて恐ろしいのは、伝染病自体もさる事ながら、その発生と被害状況の実際をどこまでも隠蔽しようとする中国政府の体質である。
臨場感溢れる本書の著者は『タイム・アジア』の元編集長であり、まさしく“その時その場に”居合わせた当事者による、SARS最前線からの報告と言える。
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