メガヒット商品を世に生み出し続けたタカラの創業者、佐藤安太氏が著した本書は、過去の経営を分析したり、単なる想い出話を綴るのではなく、昭和のおもちゃ史を後世に残そうという使命感を感じさせる。
ダッコちゃん、リカちゃん、人生ゲーム、ミクロマン、チョロQ、トランスフォーマー、フラワーロック…それらのヒット商品は一過性の流行ではなく、発売後数十年経った今でも世界中の子供たちに愛されている。
氏は、永久に売れ続けるマーケティングについて、「その商品がもつ世界観(バックグラウンドストーリー)の確立」こそが重要であり、それがあって、ユーザーが商品に潜む新たな魅力と付加価値を見つけ出していく「顧客参加型マーケティング」へと繋がっていくのだと言う。
そして、本来玩具とは何か、それのもつ社会性、文化性とは何なのかといった本質論議をおろそかにして、皮相的に自分勝手な商品をつくりだしてはいけないと、今どきのゲームをはじめとする玩具へ苦言も呈している。
このように、モノづくりに関しては、大きな成果と実績を伴う方法論を築き上げたにも関わらず、人づくりに関しては確固たる方法論をもたずして会社を大きく成長させてしまったと猛省した氏は(これだけでも凄いのに)、モノづくりに理論的な方法論があるように、人づくりにも理論的な方法論を作ることが出来るのではないかと考え、タカラ会長を退任後、NPO法人を立ち上げ、86歳にして山形大学大学院理工学研究科で博士号取得する、正に実行の人といえる。
どうすれば人間的成長を成し得るのかという課題を、客観性のある学問の域にまで高め、その方法論をシステマティックに確立しようという「成功エンジニアリング」の研究は、震災後の「再生復活のための国家戦略」にまで想いが拡がる。
氏の情熱はいつまでもどこまでも燃え尽きないのである。
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