舞台は核戦争あるいは何らかの理由で破滅した世界。
空は厚い雲に覆われ始終灰色をしている。寒さは徐々に増し、地上に最早生命の営みは認められず、わずかに生き残った人間は互いに略奪し殺し合い、そして飢えをしのぐために人を食べることも厭わない。そんな暗澹たる中、荒廃した大陸を父と幼い息子が旅をしている。
暖かい南を目指しているが、辿り着く先で得られるものに確信はもてない。
生きることに何の意味があるのか、人は自分の為だけに生き続けることは出来ない。
希望のない世界にあって、父親は息子の為に生きることだけが支えであり、無垢で純粋な魂に応えるべく、父は正しく善き人であろうと努力する。
旅する二人の姿は切ないほど穏やかに物語られ、旅路で交わされる親子の会話は、あまりにシンプルで心うたれる。
極限の状況におかれた私たちは、人として果たしてどの様な生き方を選ぶことが出来るだろう...
とても考えさせられる一冊です。
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